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第70話 莉央の母親

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-09-27 06:01:55

 電話口から漏れる雑音が、耳の奥で小さくシャリシャリと鳴っていた。

「……少し、場所を変えて話せませんか」

 自宅のリビングで共用タブレットを握りしめたまま、真帆は静かに言った。

 電話の向こうで、沙耶が息を詰める気配がした。少しの沈黙のあと、「はい」と短く返事があった。

 三十分後。真帆は自宅から車で十五分ほどの場所にある、古いバイパス沿いの喫茶店に向かった。

 ファミレスのような華やかさはなく、平日の昼下がりということもあって、店内にいるのは数人の年配客だけだった。セピア色に煤けた壁と、古い木製家具の匂い。一番奥の、通りから見えにくいテーブル席に沙耶は座っていた。

 テーブルの上には、冷え切ったアイスティーのグラスがポツンと置かれている。グラスの表面を伝った水滴が、コースターの紙を丸く濡らしていた。

 真帆が向かいの席に腰を下ろすと、沙耶はゆっくりと顔を上げた。

 目元は赤く腫れ、皮膚の薄い頬が痛々しいほど白く強張っている。

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